近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

モノづくりの仕事が主役になるために必要なこと

今の日本でも物々交換という習慣はある。

都会ではほとんど成立しない行為だと思うが、田舎にいけば、今でも物々交換はご近所同士で行われる。

 

農家の人が漁師と物々交換する。

これは商売でないとしても、お互いが作ったモノを渡し、相手からモノをお返しに受け取る。立場は対等だ。ある意味、信頼関係があるからこそ、物々交換が成立すると思う。常にこういう信頼関係のある社会はモノが基点に成り立ってきた。

 

 

今、スマホで決済すれば、宅配で家にモノが届く時代だ。

モノがどういう風に作られて、誰がモノづくりに関わっているを知る機会はほとんどない。

 

特に今の子供たちは、スーパーで売られている魚の切り身がそのまま海で泳いでいると思っている子供がいるという笑い話に象徴されるように、実際のモノづくりの体験がないままに大人になっていく。

 

今でもそうだが、モノづくりの人はモノづくりをするだけのことが多く、それを使ってもらう、買ってもらう顧客への対応はモノを販売する側にゆだねる。

こういう分業の仕組みが始まった頃は、販売する側は、流通のプロセスの一部として、作ったものを顧客に届ける重要な役割を担っていた。

それがだんだんと、顧客と販売する人達の都合や論理によって、作ったもの価値が決まってくるようになった。今や値決めをするのは、ものを作る人ではない。

 

こういうことを長年続けていると、モノづくりの側は、ますます、モノ作りだけする人になってしまう。極端な話、頑張って付加価値のある野菜や果物を作っても、顧客や販売する側の力が強くなると、値段は自分達では決められない。

 

そして、総じてモノづくりに従事する人達の報酬は、モノを販売する側の人達より低くなる。

顧客にとって適正な値段は、販売する側が設定する。そのしわ寄せは、モノづくりの方に必然的に来る。モノづくりが魅力的な仕事と思われない理由のひとつでもある。

 

例えば、農業が分かり易い。

今でも、作るだけの農家は沢山ある。

6次産業化の必要性が叫ばれて久しいが、大半の農家は、販売は、農協や食のECをする会社にお任せである。また、大きな市場に出そうとすれば、安定供給を要求される。約束した量を期日に定期的に用意出来なければ、自分の商品を取り扱ってくれない。ますます売り先が限定されていく。

 

私の労働観でもあるが、農家で生まれ育ったこともあり、やはり、モノづくりの仕事は大変だと思う。併せてだからこそ、価値がある仕事だとも思っている。

 

今、ITを上手に使えば、顧客に生産者がダイレクトに販売することが出来る。これは農業に限らず、ITで仕組みを作って、顧客と直に取引できるような仕組みは比較的簡単に作れる。もっとも継続的な運用はハードルが高いが。

 

今は、ここ数年の6次産業化政策の一環もあり、産地直送販売、生産者の顔が見れる購買、あるいは、急発展するECなどがある。例えば、野菜詰め合わせセットを定期的に届けるサービスなどがある。農家が主役になる時代も近いかもと期待は膨らむ。

 

モノづくりといえば日本の中小製造業もそうだ。いい商品を作る力があっても販売が自社でできなければ、企業価値を損なう可能性がある。大企業や中小企業支援団体の類に依存しているだけでは、これから先は存続も危ぶまれる。

 

やはり、モノづくり企業の価値を高めようとすれば、まずは顧客に存在や価値を知ってもらうこと。これは単独でするのではなく、中小企業が横連携をすることも必要になる。

日本の財産でもあるモノづくりのノウハウや価値を未来に継承することも日本の将来には不可欠なことである。中小企業もこれからは主役になって欲しい。

 

他にもモノづくりの仕事は他にも沢山ある。クリエイターや陶芸家、伝統工芸に携わる職人。日本には数多ある。

こういう職業の価値をもっと高めるためには、やはり、その存在や魅力を子供達や海外の人達に知ってもらうことが何よりも大切だと思う。

 

以上