近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

DX一色の感があるがITぐらい過剰投資になるものは無い

今、日本はDXブームといっても過言ではない。

 

私は、最近、地方活性化や古民家再生の仕事で、日本の地方めぐりが増えた。

地方には、一次産業や中小企業が主役の場所が多い。

驚くことに地方でもDXが日本のいたるところに進行している雰囲気がある。

 

連日、新聞などのメディアでDXが叫ばれている。IT企業もそれに乗じて絶好のビジネスチャンスとして超積極姿勢である。

一方で、一般の事業会社の経営者も積極的にDX投資と言う。

 

 

このにわかブームのことの発端は、デジタル庁創設である。

コロナ禍で日本のIT化、デジタル化が先進国やIT立国を標榜する新興国などに比べて、遅れているというのである。

確かに、私が知る世界のIT活用からしたら、遅れている部分は沢山ある。

しかし、それで日本での生活や仕事が不便であったわけではない。

 

もちろん、コロナ禍においては、IT活用は必要に迫られた部分は多々あった。

接触やオンライン診療などが喫緊の課題になった。

しかし、それでも1年も過ぎれば、流石に日本も対応が進んできた。

そんな中で、一気にDXブームになった。

 

これは、かつての20年以上前のITブームと全く同じ雰囲気と動きである。

その時はこんな流れだった。

世の中にインターネットが登場して間がなかったころだ。

特にIT化が遅れていた中小企業の世界へのIT活用が叫ばれた。

経営者にとっては青天の霹靂のように感じたことだろう。

多くの会社が心構えも準備もなく、世間に流されるようにIT活用を推進した。

 

そして、ITサービス会社の言いなりになった。

その当時、ITについて、経営判断できる経営者は皆無だった。まして、社内でITに精通した社員など存在しない。にわかIT担当者が急増した。そして、失敗の山になった。

 

アナログ力で活動してきた中小企業の世界で、IT化は無用の長物になった。

もちろん、常にどの世界でもそうだが、10%ぐらいの先進的な中小企業は、苦も無くIT活用を推進した。そして、経営が飛躍した。

 

その成功の最大のポイントは、経営トップの推進力と目利き力である。そして、アナログだけれども、業務の標準化ができていて効率経営が実現していたところだ。要するに、土台のないところに家は立たないのである。

ITは魔法の杖ではなかったわけである。

 

さて、DX対応を急速に迫られる日本の産業界。結局は一番苦労するのは中小企業だろう。

中小企業の経営者が見ておかないといけないのは、一番に顧客の変化である。

 

この顧客はDXだからといって、急に変わるわけではない。

すでにあらゆる世代が、スマホで生活している。

買い物からはじまり、銀行のATMとして使ったり、音楽の練習にも使える。今の流れは、ありとあらゆるものがスマホ一つで、済ませれるように進んでいる。

 

だからと言って、顧客の求める商品やサービスが変わってるわけではない。

特に田舎に行けば、いつも通りの市場での買い物があり、いつも通りの生活がある。

 

私の中小企業向けのDXに対する心構えはこうだ。

 

生活インフラや社会インフラの道路で考えれば、理解が早い。

今まで、舗装されていなかった小道までが舗装され、狭くて通りにくかった道路が広くなり安全になる。実際の日本の道路は世界でも群を抜いて、道路網が整備されている。田舎に行ってもほとんどが舗装されている。

 

これがITの世界になると、未舗装、未整備の道が沢山あるということだ。

DXが進むと、全てが舗装されると考えてよい。

だからと言って、利用者の道の使い方が劇的に変わるわけではない。

 

せいぜい有料道路が増えて、利用者はその料金を支払う。

車を運転するときは、高速道路の走り方は学ばないといけないが、車の運転は一般道の運転と基本は一緒だ。言い方を変えれば、ようやく日本のオリジナルなITのプラットフォームが構築、整備されるということだ。

今回のDXはこんな感じで考えると、20年以上前から始まったIT活用と何ら変わることはないのである。

 

今回決して、間違った選択をしてはいけない。

中小企業と言えどもDX対応は必須です。しっかりと投資しましょう。という商売が横行し始めている。IT投資や活用は、焦っても何一つ得することはない。

 

すでに経営者も一般の生活者として、IT社会の進展は実感している。

これが顧客の変化である。しかし、それは、表面上の変化であり、日本の顧客が求めるレベルの高いヒューマンサービスやアフターフォローの期待は何も変わっていない。

 

ITの世界だけで中小企業が勝負しようとしても、それは土台無理な話である。

中小企業の強みを生かしたIT活用を20年前に立ち返って、考えることが必要である。

DXが以前のITブームの二の舞にならないように、中小企業に向き合っていこうと思っている。

 

以上