近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

デジタルとアナログの融合で生まれる文化に期待

ITの仕事を長年してきたこともあって、デジタル社会の浸透に対して私は常に懐疑的である。

 

もともと、デジタルというのはコンピューター業界からメジャーになった。

 

デジタル化と言われる言葉だ。

何をデジタル化するかといえば、アナログをデジタル化するわけである。アナログとは人間がすること全般である。話する。書く。食事する。運動する。人間は実に沢山の活動をしている。

 

それをスマホで動画や写真に残せば、デジタル化である。仕事の場面で考えても沢山ある。手書きの顧客台帳があったとする。これをパソコンを使ってデータするとこれはデジタル化である。

こんな風に、コンピューターが存在しなかったときに行っていた事を、コンピューターが登場して以降、コンピューターで処理できるようにすることをデジタル化ということで業界で使われるようになった。

 

それが、今や、デジタルとアナログはもっと広い使われ方をする。

例えばデジタル人間、アナログ人間と極端に分けて人を分類しようとする人がいる。概ね年齢が高い人は、自分をアナログ人間として、それ以外をデジタル人間と括ろうとする。

 

反対に、今の若い世代はスマホが当たり前で、デジタル人間と問われて違和感を持つ人は少ない。仮に、自分はアナログ派の若者だと主張できる人がいたら、とても自己主張がはっきりして有望だと思う。たいていの若者は年配の人でスマホが使えない人をアナログと言う。

 

また、中小企業はアナログが似合う。大企業はデジタルが馴染む。大企業でアナログ企業という印象の会社は無くはないが珍しい。中小企業は、ガテン系の現場の仕事が多いので、自然とアナログになる。大企業はそれに比べると本社機能がしっかりしていて、その印象は今の時代は、デジタルだ。

 

第一次産業で考えても明白だ。この段階でアナログという印象だ。いくらスマート農業、スマート漁業と言われたとしても、アナログの印象は変わらない。

こんな風に考えていくと、そもそも、私たちは随分前から周りの人や会社や仕事をデジタルとアナログに分けてレッテルを貼っている。

 

私は長い間、ITの仕事をしながら、ずっと考えてきたことであるが、自他ともに認めるアナログ派である。

決して受け狙いでした訳ではないが、20年以上前“だから中小企業のIT化は失敗する”を上梓した際にも強く宣言したが、中小はアナログ重視で行きましょうと力説した。そして、全国のセミナーでも繰り返した。自分でいうのもなんだが、中小企業の社長は一様に共感していただいた。

 

なぜそう考えたかというと、私の労働観だ。私は農家育ちなので、労働というのは、人間が主体で体を動かして行うものという感覚が染みついている。

もちろん、私が金融業界の仕事をする父親の家庭で生まれていたら、その価値観は違ったかもしれない。だが、根っこは別にあると思う。

 

そもそもITはツールに過ぎないのである。

石器時代の石器と同じだ。これは今後どれほど科学技術が発達しても永遠に変わらないと思う。人間は昔のアニメにあった人造人間にはなれないのだ。人間はこの先ずっと生身の人間なのである。その人間そのものがアナログということである。

 

デジタルはどこまでいってもツールである。だからそもそも、アナログとデジタルというのは、人間とツールと置き換えてよいと考える。

 

人間は実に多様な数多の文化を生み出してきた。それには時代時代のツールが貢献しているのは間違いない。絵を描くにしても音楽にしてもツールが必要だ。今のアニメにしても映画にしてもこれも文化の一つだと思うが、ツールがあればこそ実現できていることである。

 

 

私は、今のデジタルをアナログの人間が使うことによって、新たな文化が生まれると思っている。デジタル人間とアナログ人間を分けて使っているうちは、文化の醸成には至らないと思う。

 

そういう意味では、そろそろ、全世代がデジタル慣れしそうなこのタイミングが文化を生み出すチャンスだと思う。

 

以上