近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

神戸の街の再開発と建築を見ていて思う事

建設ラッシュ。

日本の高度経済成長時代の代名詞の一つだ。

私は、建設産業に長年関わってきて、日本の建設産業の行く末には人並み以上に関心がある。

 

日本の建設業は、とっくに曲がり角にある。

簡単に言うと、新築のオンパレードから建設物のメンテナンスをどうするかという大きな転換が必要である。高層ビルや大型マンション、そして高速道路やトンネルや橋。ありとあらゆる建設物が老朽化する。当然、放置すればいずれは、膨大な産業廃棄物となる。

 

もちろん、少なからず、修理補修しながら如何に長持ちをさせるかに取り組んでいる。私は中古マンションに長年住んでいるが、定期的に本格的な補修工事が行われる。

 

言いだしたらきりがないが、対症療法的なメンテナンスはコストの増大を生むばかりだ。それでも、長持ちさせて使うことには賛成である。

日本の建設事情は、衰退産業ではないにしても、かつてのように、建設ラッシュになることは少なくともこの先100年はないと思われる。

 

一方、私が得意としてきた新興国は、日本のかつてを彷彿とさせる勢いである。

20年以上前の中国の上海や新興都市の発展ぶりも目の当たりにしてきたし、私が長年活動拠点としてきたベトナムホーチミンでのここ数年の建設ラッシュも凄まじい。

飛行機の機上から見ると驚くが、月単位で街が変わる。こんな様子に慣れてくると日本に戻ってくるたびに、建設工事の少なさを実感したものだ。

 

私は、長年神戸に住んでいる。

神戸は決して大都会ではないが、人口約150万の都市で、国際都市を長年標榜している異国情緒漂う素敵な街である。

今、神戸市では、様々な建設工事が行われている。冒頭で書いた建設ラッシュではもちろんない。見るからにピンポイントで街の再開発をしている感じだ。

 

私が昔から馴染んでいる東遊園地がある。最近一角に安藤忠雄氏の設計監修による子ども図書館がオープンした。観光名物としても有名な花時計と一体化したこの図書館はとてもおしゃれで素敵だ。これ一つ見ても、神戸市の目指す街の方向性が見えてくる。そして、今、急ピッチで東遊園地全体の改修工事が進んでいる。

時々傍を通りながら、コストをかけてまで、改良する価値は何なのかを考えてみる。

やはり、都会の真ん中の公園の役割は大きい。

 

自然という意味でもそうだが、緑に囲まれた安らぎの空間であり、市民が行楽に出かける場所であり。済んだことを言っても仕方がないが、今、新築のビルを建てるにしても、今の建築基準法や関連の法律によって、しっかりと、緑地が確保される。ようやく良い時代になった。

 

当社の本社があるオフィスビルの真横と真向かいに、2つの新築物件が完成した。こちらの建設の様子も随時観察していた。単純に工事現場が好きだという理由もあるが、新興国のような勢いに任せた建設ラッシュではなく、一つずつの建物の意味合いを吟味し企画し施工する。そんな様子を見ながら、完成した様を見ると、流石日本の建築レベルの高さに改めて感心する。

 

更には駅前ビルの建設も発表されている。その周辺の幹線道路が歩行主天国にもなるようだ。

神戸が好きな私としては、神戸がどんどん良くなるのは嬉しい。

その一方で、どうして今のままではいけないのかとも思ってしまう。本当に必要があって建築しているのだろうかという疑問もわく。

 

実際、神戸市は、1995年1月17日の阪神大震災からの復興が理想通り進んだとは言い難い。結果的には、神戸の美しい景観を明らかに阻害する高層マンションが乱立した。すでに、こういう類の開発は禁止されることとなったが、ある意味、時すでに遅しである。

完全に景観を損ねている。時は、タワーマンションの建設ラッシュ。こういうことを規制せず今に至る。

これからの神戸の街づくりには期待しつつも、すでにやってしまった街の乱開発を取り戻すのには、更に膨大なるコストが必要だ。新興国の都市開発はぜひ、日本を反面教師にしてほしいと心底思う。

以上