近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

日本のITエンジニアはなぜ常駐するのか?

在宅勤務を含むテレワークが一般的になった今。

 

IT業界が今後どういう変化をするかとても興味がある。

 

私は22歳からIT業界に関わってきたので、すでに36年ぐらいである。この間に世の中は劇的に変化しているが、特にITに関することは、想像を絶することばかりである。

 

一般的には知られていないが、IT業界で数十年に渡る一つの典型的な仕事スタイルがある。

それは、お客様先に常駐するという形態だ。これは派遣とは違うが、派遣契約で活躍するITエンジニアも多い。

 

分かり易くするために、建設業界を考えてみる。

建設における現場とは、まさしく現場でビルを建築したりトンネルを掘ったりする場所であり、そこにいかないと仕事が始まらない。

 

だから、大手ゼネコンに入社しても現場監督はその建築現場が仕事場所になる。実際私の同期は、サウジアラビアの病院や日本国内のトンネル工事に入社後すぐに配属された。

私がそこに行っていても何ら不思議はなかった。

しかし、運命のいたずらと言うか、私は電算室勤務になった。

 

私は、ゼネコンに入社してから、そののちに転職してIT業界に関わったので、常にIT業界と建設業界を比べてものごとを考えてきた。

 

実は、私は20代はITエンジニアだった。そのキャリアの中で、私はお客様先に常駐して、ITの仕事を数年間した経験がある。

たいていは、大手企業の情報システム室に常駐した。私の場合は長期ではなかったが、一番長かったところで、1年ぐらいである。鉄鋼メーカー、スーパーマーケットの大手企業、化粧品会社、住宅メーカー、建材機メーカーなど色々と経験をしてそれはそれでとても楽しかった。

 

ほとんどの先には工場があり、そこに関係する管理システムや制御システムなどの仕事に関わっていた。

 

私も20代に経験したが、常駐での業務は、自分の会社という感覚が薄れる。派遣社員の感覚と似ていると思う。自分の会社はお客様であると錯覚をするのだ。帰属意識が薄れることが、こういう形態の会社の最大の課題だった。

 

毎日毎日、出勤する場所が、お客様のオフィスになるとそういうことは自然である。 

 

これは、建設業の現場とは全く違う。

私がそういう体験をした30年前は、今のようなオンライン環境は皆無だった。仮にお客様の外から仕事しようと思えば、専用回線を敷設して、お客様の大型の汎用コンピュータに接続が必要である。だから、お客様の場所への常駐が自然の流れだ。

また、お客様先でないといけない最大の理由が情報セキュリティである。

ITは特に機密情報を扱うことが多いので、お客様の社外というのはリスクが高いという判断である。

ところが、一度、定着した習慣というのは変わらないもので、いまだにお客様先常駐は大きくは変わってこない。

この30年間の仕事環境の劇的な変化にもかかわらずである。

 

これに近い議論が、新興国中心とした海外にオフショアするという話である。

今や日本の企業もオフショアは当たり前だが、たった20年前でも中国へのオフショアは問題視された時期もある。同じように遅れてベトナムもなった。

こういうことと比べると、日本国内の常駐は、スムーズにテレワークや在宅に変われそうなものだが、なかなか、進まない。

 

IT技術者、データ入力、CAD図面の制作、グラフィクデザイナーなど、どこからでも出来る仕事がどんどん増える。

極端に言えば、ITなどのこれらの仕事は世界中どこにいてもできる。

すでにベトナムはIT先進国の仲間入りの入り口だ。ベトナムで日本のような常駐でエンジニアが仕事するケースはまれだ。

まだ、民間企業のIT需要は大きくはない。だから、そういう開発は少ない。

 

ただ、ベトナムのIT産業の今後の発展は疑う余地はない。

オンラインでの仕事環境に適応した形での、ベトナムスタイルが新興国の標準になるように思う。

 

 

以上