近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

電子は残る、紙は消える

今後、デジタル活用が加速度的に進む。これは疑いのないことである。日々、日本中、世界中で、デジタルデータが増えている。

 

私達は、パソコンが普及しだした30年以上前、電子と言う言葉を使い始めた。eメールが代表的だ。日本語で言えば、電子メール、英語でErectricだから、eメールである。

そして、ECという言葉は常識になった。書籍も電子書籍と言う。この電子のニュアンスはデジタルと同義語として使っていても、大きな問題はない。結局は、情報やデータを紙で残すか、デジタルで残すかというところに行き着く。

 

今、私たちの身の回りには、アナログの代表である紙の資料や本などが溢れている。少し前から、大きな変化が始まっているが、これからは、紙の資料だけが存在する状態と言うのは、なくなっていく。簡単に言えば、手書きの資料でない限り、今どき、ITを使って資料などを作るのが当たり前なので、それは印刷したら紙になるが、元はデジタル(電子)データである。

だから、今どきは、紙だけの資料は消えていく。

こういう風に考えると、今は、完全に過渡期である。

今、裁判所で、過去の公判に関わる資料が廃棄したことが問題視されている。かなり以前の資料だから、デジタルデータは残していなのかと不思議に思う。メディアを見ている限り、紙の保管資料を廃棄した云々が問題視されている様だ。30年前だと微妙だが、少なくとも文章は、デジタル化されていても不思議ではない。

 

これは、企業でも大きな悩みの一つである。今、デジタル化という言葉だけが独り歩きしすぎている。まるで、今、企業が保有しているすべての紙情報をデジタル化しないといけないかのような錯覚もある。

役所や学校や私たちが生活する場所には、山のような紙の資料が溢れている。手紙も多いことだろう。何か、魔法でも使えたら、世の中の全てのアナログ情報を、デジタル化できれば、こんな楽で生産的な事はない。

 

ところが、現実は不可能だ。コストの問題である。今ある全てのアナログ資料をデジタル化するコストは天文学的すぎる。OCRなどが発達していて、楽にはなっているが、それでも相当な労力とコストである。

では、どうすればよいかであるが、これは仕事でなくてもプライベートでも簡単な話しである。要するに、まずは、デジタル化する意味を考えることである。

一つは、永久保存する必要があるかどうか。アナログ情報の永久保存は、不可能に近い。ところが、デジタルデータは、それができる可能性が高い。まあ、これは極端だが、要するに、今後のIT活用社会の中で、デジタルしておいた方が、意味がある、役に立つ、価値があるか。こういう観点でデジタル化するかどうかを決めればよい。

 

例えば、企業の管理業務に関わる証憑類などは保管義務期間が定められている。あと、1、2年でその期限が来るようなアナログ情報を、今、優先してデジタル化する必要はないだろう。

 

あるいは、自社のノウハウがアナログ情報で保管されている。イメージは、書類棚にキングファイルが並んでいる。一つずつに、自社のノウハウが記録されている。しかも、それは原本だ。こういう価値のある知的資産ならば、コストが少々かかっても、速やかにデジタル化するべきだ。

 

デジタル化するだけで、情報の保全が出来るのと、あとは、様々な利用が可能になる。こういう価値のあるアナログ情報を選別して、来るべきデジタル社会に適応する準備を始める必要がある。そうしないと、紙の情報は消えてなくなる可能性が高い。

 

こんな過渡期にいることを、私たちは知っておく必要がある。すでに記録の世紀が始まっているのである。

 

以上