近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

人間にとって農業とは何か

人間にとって農業とは。

これは、ある中古本のタイトルである。

読み進めていくと、驚きと共感と感動が拡がる秀逸の本である。

 

 

最近、農と農業を健全化しサスティナブルに発展させるお手伝いをするための新会社を設立したこともあって、私自身は、日本だけでなくヨーロッパなどの先進的な取り組みも探求したいと思っているところだ。

 

この本は、複数の有識者か執筆している本だけあって、多面的で論理的でかつ事例やデータが豊富である。そして帯には、「農」の危機は人間の「生」の危機である。とある。さらには、工業化社会から発展途上国までの調査にもとづき、市場経済の論理を超えた「農」を活かす社会を明示。とも書かれている。帯だけでとても興味をそそる。

 

一見難しい本ではあるが、事例が具体的でとても分かり易い。読み進めていくと次々とワクワクが増す。出だしの都市と農業の関係の内容だけでもこの本の価値は高いと思う。

 

日本で言う大都市は、やはり東京である。そういう定義での分類は分からないが、大阪も私の感覚的には大都市である。私は今神戸に住んでいる。ここは中都市だろう。そして、私の出身の徳島市がある。あとは、地方には沢山の町や村がある。

 

人口は減って高齢化が急速に進む国である。

地方消滅といった衝撃的な意見や本も目につく。実際に、農と農業の関係の活動で田舎に行くと、限界集落の存在や過疎化が進む村の今の様子が痛いほど伝わる。

もちろん、ここの住人でない限り、本当のところは分からないが、大都市東京などと比べると、とても同じ日本で同時に起こっているとは考えにくい。

 

日本も世界の先進国を追うように、戦後、急速に工業化を推し進めてきた。そして、劇的な経済成長を達成した。その過程で、概ね農村の労働力は都市部や近郊の工業の労働者として吸収されていった。また、田舎の若者もあこがれの都会に向かった。

 

結果的には工業化が都市を肥大させ、田舎の衰退を招いた。これは世界でも同じだ。そして、日本は、工業化とは直接的には関係がない部分があるにしても、少子化が一気に進んできた。

高齢化に関しては課題ばかり見るのではなく、長寿の国として良いことだととれば、必ずしも深刻ではない。しかし今は、社会全体がこの状態に適合できていないのと、高齢者自身も急に長くなってきた人生をどう過ごすかに戸惑っている。

 

田舎にも高齢者は多いが、現実的には、生活が便利な大都市に向かう高齢者も多い。いわゆる東京のベイエリアの高層マンションなどが有名だ。

ここ10年ぐらいは、こういう動きは加速しているように思う。

こんな風に思い返していると、人が田舎に向かうような逆回転は出来ないものかと思う。私も何かきっかけになる仕組み創りや活動を創めようと思ってきたが、世の中には似たようなことを考えている人は意外と多い。自然とつながりが拡がる。

 

こんなタイミングで、日本はコロナ禍に遭遇した訳である。日本だけではないが、結果的には、自然回帰、田舎回帰の本能が目覚め始めた。

 

ワーケーションは経済的視点から見たら、都会での仕事を如何に田舎でするかである。こういった発想に過ぎない動きも目立つが、田舎で農や農業に触れながら働く。いわゆるノーケーションの価値は高い。私は今が人間が「農」を基盤の生活に戻す大チャンスだと思っている。

 

それは全員が必ずしも農業をすることではない。

「農」を知り理解して、何らかで「農」に関わった生活をするという事である。

 

冒頭の本の中でも触れているが、それは、必ずしも田舎に行かないといけないという事でもない。もちろん、過疎化が進み衰退が著しい田舎を何とかするのが先であるが、大都会や都市も変えていけばよい。

 

実際に、私の周辺でも都市の真ん中で、ビルの屋上の家庭菜園の人気が出たり、マンションのベランダで野菜を作ったり。こういう活動を指向する人は以前よりは確実に増えてきた。

これを単なるブームで終わらせるのではなく、継続的な生活基盤として再構築することが何よりも大切である。そして、新たに進化をする田舎と連動すると尚良い。

 

田舎と都市が常につながる。それは、移動による人の直接のつながりとオンラインのつながりであり、そういう新たな「農」を基盤としたプラットフォームの中で、都市と田舎が連携する。こういうことの実現に貢献しようと思っている。

 

以上