近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

属人的な仕事は組織としては百害あって一利なし

 

 

中小企業と長年関わってきて、一番課題だと思うことは、属人的仕事のオンパレードであることだ。

 

本音で言えば、課題と言うよりも、何年たっても解決できないことも多く、これが中小企業の特徴というか弱点である。

もちろん例外のエクセレントな会社もあるが。

 

どんな業種に限らず、社歴が長い中小企業であれば、経理や総務などの管理系業務のベテラン社員がいる。社歴20年ぐらいになると、それなりの中小企業でも、一人のベテランが管理業務の肝心なことを全て掌握していて、全ての判断やさじ加減はその人に依存している。

 

これぐらいになってくると、社長から見れば、阿吽の呼吸の世界になり頼もしい判明、何らかの理由でその人が突然いなくなると大混乱に陥る。

こんな感じになると、このベテランの役割の代わりはそうそう立てられない。誰かに引き継ぐことは困難になる。

もっとも、中小企業の場合は、男性社長の場合は、そういう役割は奥様ということも多い。

 

今、中小企業といえども、IT活用は必須の時代だ。当然、業務フローの標準化、見える化を前提にしたIT活用が意味を持つ。

特定の人にしかわからない、できない業務はあってはならないのである。

 

他の専門部署でもこれと同じようなことが起る。

例えば、特殊な部品を作っている工場のベテラン職人の仕事。

その製造機械を操作できるのが社歴35年のベテラン社員のみ。こんなケースもある。

 

営業職はもっと典型的だ。スーパーなトップセールが一人いれば、中小企業の営業としては成立することが可能だ。顧客に関することは流石に取引が発生すれば、販売管理、経理情報としても把握できているが、担当者が実際にどういう対応しているかといった商談履歴などが一切、見えない。

こういう中小企業も未だに多い。

SFAと呼ばれる営業活動管理のIT化が20年ほど前から進展しだしたが、今でもこういう会社は沢山ある。

 

アナログがダメなのではないが、IT活用を進めようとしたときはとても大きな障害になる。

 

では、なぜ、人間はやっている仕事が属人的になるのだろう。

 

前半の事例でも書いたが、超ベテラン社員が健康でなにもアクシデントなく退職もせず継続勤務が保証されているのであれば、属人的でも、百歩譲って成立するかもしれない。

ただ、現実的にはそれではリスクが大きすぎる。

 

そもそも、中小の場合、社長に何かあったらどうするかの問題が常にある。経営者の義務たして、リスクファイナンス面の手当も含めて、ある程度はどこでもリスク対策をしている。

 

ところが、こういう現場の業務を特定の人に依存せずに、事業継続するための対策に関しては、中小はとても無頓着だ。

 

こうなる最大の原因は何と言えば、それは経営者の考え方が甘いのと実践力が足らないからである。リスク意識に乏しいのに加えて、目の前のことだけをこなせばよいと考えているからだ。

 

熟練を要する特殊な仕事でない限り、特に管理業務は、標準化して手順書などをきっちりと残していれば、引継ぎに苦労はない。管理業務のワンサイクルの1か月にプラスアルファの期間があれば十分だ。

 

もちろん、社員が会社を辞めることを前提に経営を組み立てるのは大変だ。

ただ、同時に全社員が辞めるのは超異常事態で、平均的には退職者にしても突発的なアクシデントにしても、そう頻繁に起こるものではない。

 

退職者のカバーのためだけでなく、業務の標準化、見える化をすることによるメリットは幾つもある。

 

先ほど書いたIT化に適しているということ、見える化によって、業務改善も進みやすい。何よりも、仕事を簡単にできるだけ多くの人がいざという時は対応できるようにしておくと、組織がとても柔軟で強くなる。

変化が激しい時代に属人的な仕事がはびこっている状態は、人間で言えば、血管が詰まっているのと同じである。

 

以上