近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

部分最適と全体最適は永遠に両立しないのか?

企業経営の現場で、どこの会社にも見受けられるのが、部分最適全体最適の問題である。大きな企業や組織などでよくいわれるセクショナリズムは典型で有名な話である。

 

そこそこの会社になると事業部制になっていて、独立採算指向が強くなる。事業部間の競争意識がプラスに働くことも狙っているし、ひところはカンパニィー制度ともいわれていたように、一つの会社組織と見立てて事業部運営すると収益も好調となる。

 

その反面、事業部間の連携や協力が疎かになり、会社全体で見たら無駄が発生したり、コストが重複したりする。組織横断的に存在する管理や人事部門の負担も大きくなる。

 

また、単一の事業の会社でも、営業部門、直接部門(技術またはサービス)、管理部門の意思疎通が十分でない問題も多々発生する。これも、部分最適に陥る典型である。

 

私はベトナム社員教育の現場で、部分最適全体最適を教えるために色々と具体的事例を工夫してきた。

15年ほど前のベトナムでこのテーマを教えるのは容易ではなかった。理由は簡単だ。組織という概念と仕組みが実際に機能している会社は皆無だった。個人が集まって会社という感覚だ。

 

日本の昔に、当たり前とされてきた帰属意識などはないに等しかった。簡単にいえば、個人と社長という関係だけしかないような状態だった。

 

今のベトナムは日々進化しているし社員教育を社長が率先して実施するベトナム企業も増えてきた。社員教育の重要性が認識されてきたということだ。

 

こんなベトナムで私は、ある日、個人最適という言葉をヒラメキ、教育の現場で色々と頻繁に使ってみた。

個人最適とは、少し悪くいえば、自分のことだけを考えることだ。これは、仕事ではなかなか成り立たない構図ではあるが、一方で、一人一人が独立採算的に動き結果を残すと考えれば、デメリットばかりではない。

 

ベトナムのような国は個人主義の人の集まりともいえる。こういう国で組織やチームワークを定着させるのはとてもハードルが高い。ただ、近年はサッカーチームに見られるように、日本のチームワークを導入して強くなってきた。だから、ベトナム人もチームワークの重要性には随分前から気付いている。

 

個人最適と全体最適を教えることがチームワークの第一歩と考えて、教育現場に取り入れた。

 

色々と彼らに分かる事例も考えた。

例えば、皆さんがお父さんかお母さんだとしましょう、子供が3人います。夕食を食べに行くことになりました。一人は、寿司が食べたい。もう一人はステーキが食べたい。もう一人はベトナム料理が食べたい。さて親のあなたはどうしますか?

 

この話は結構盛り上がった。当然、答えは様々である。これのエッセンスは組織運営にも応用できる。いまだに忘れられないある受講者からの迷回答あった。それは、全部食べられるレストランに行けばよい。これには噴き出した。確かにそうではあるが、そんな都合の良い解決策は現実にはなかなかない。

 

ところで、今の日本はどうだろうか?

チームワークで世界でも有名で評判が高い日本はいまでもそうだろうか?

全体のことを考えて、個人が自己判断して責任がある行動ができているだろうか?

私はコロナ禍になってからの日本人にとても興味がある。

何かと不満を誰かに言いたい人が増えているのは間違いない。自己責任とそれに伴う行動を放棄して、文句ばっかりの人が増えてきた。

 

そして従来のメディアもそうだが、輪をかけてネットメディアがそういう声をネタに話題を作る。

 

個人最適が過ぎる国になっていないだろうか?

個人最適と全体最適のバランスが今崩れているのが日本だと思う。

 

 

これは、世界の環境問題にしても同じだ。

特に、部分最適が強くすぎで、環境問題はなかなか良い方向に前進しない。私達の周りにはあまりにも課題が多いが、企業が中心に世の中を廻していた時代から、個人が中心に世の中を動かす時代だと思う。

 

そういう意味では、仮に部分最適がなくても、個人最適がしっかり機能して全体最適とかみ合う必要がある。詳しくは別の機会に書くが、ITを上手に活用すれば実現可能だと思う。

 

以上