近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

リープフロッグはどうしてどこで起こるのか?

人間は衝撃的であったり刺激的であったりする言葉が好きだ。

 

映画のタイトルや書籍の題名などもそうだし、CMなどはコピーで決まると言っても過言ではない。人間の本能、情動を揺さぶる言葉をその道の人は、常に考えている。

 

ビジネスの世界でこのような表現が使われることも多々ある。

私の関係する業界で見て、代表的なものを幾つか挙げる。

 

その一つは、シンギュラリティ。

これは私の予想通り短期的なブームで終わったようなので、詳細は割愛する。

 

今流行っているといえば、スタートアップ。

これも本当の意味と意義を考えて日本で使っているかといえば、結構怪しい。冷静に客観的に起業というもの、経済の仕組みを考えたらわかること。急激にスケールアップする企業が生まれて急成長することは確かにインパクトはある、だからといって、経済全体を変革するわけでもない。

普通の起業と表現すれば良い世界まで、スタートアップと日本中が今、騒いでいる。

 

これと似たような表現が、リープフロッグだ。

蛙飛びと訳したらよいのだろうか?それとも蛙のジャンプが良いだろうか。

子どもの時によく蛙と戯れた。捕まえようとすると、ピョンピョンはねて、なかなか難しい。

 

 

そういう感覚の表現とあまり変わらない思うが、事業創造や起業の世界でよく使われている。

これは、日本だけではない。

 

改めて、リープフロッグをウィキペディアで調べてみた。

リープフロッグ(英語: Leapfrog)とは、日本語に逐語訳すると跳び蛙または蛙跳びとなるが、意味としては英語で馬跳びのことを指す。

 

馬跳びも確かに分かりやすい。全部の用法の引用は割愛するが様々あるようだ。

 

私の印象では、このリープフロッグは、ITと絡んで使われることが多いと思う。

冒頭のシンギュラリティはITだけの話ではなく、テクノロジー進化の特異点という意味だ。

 

新興国でビジネスをしていると、これがリープフロッグなんだと思う事例は枚挙に暇がない。

例えば、アフリカでは、日本では当たり前のATMが普及せず、スマホ決済の仕組みが広まっている。ベトナムは今や高度経済成長期の入り口にあると言えるが、固定電話はあまり普及していない。普及する間もなくスマホが一気に広まった。

 

おそらく、こういうことが生まれるのを目の当たりにした先進国の人は、リープフロッグというだろう。ただここで冷静に考えておく必要がある。現地の人にとっては、リープフロッグではなく、当たり前に起こった変化なのだ。

 

確かに一気に拡がる、とても速いスピードであるとインパクトは強い。こういう実感はあるにしても、比べるものもなくその状態しか知らなければ、新興国の人がその状態に驚くことはない。変化のスピードが速いことが必ずしもリープフロッグではないのである。

 

改めて書くと、先進国の今までの進化や変化の過程と比較して、新興国で起こっていることを先進国目線で観察した場合、リープフロッグが起こっていると映るのである。

 

だから、わざわざ、起業家が新興国でリープフロッグを起こすんです”と力説しても、それは先進国目線で遅れた新興国発展途上国を視ているだけのことである。

 

では、現実にリープフロッグに見えるようなことは、どこで起こるのか?また、起こす必要があるのか?ということも考えてみる。

 

まずは日本だが、こういう土壌ではない。先進国でありかつ変化を嫌う国である。良い悪いではなく、日本は自分のペースでゆっくり変化に適応する国民性だと思うし、そう出来る余裕もある。歴史もあるし忍耐強い、コツコツ型の人が多い国だ。だから、リープフロッグのような感覚で、前進する必要はない。ウサギと亀の話と一緒で亀で良い。

今、日本はDX一色てある。しかし劇的な変化を起こす必要もなければ、日本のような成熟した国ではそういうことは起こらない。日本で言えば、従来通りの中小企業の適正な変化に沿ったDX推進であれば良いと思うが、勢いだけのDX推進では短絡的な問題を生み出すだけである。

 

一方、すでに書いたが、新興国ではリープフロッグに見えることは起こり続けるだろう。しかし、それは、とてもハードルが高いことである。リープフロッグに見えるITやテクノロジーの活用や仕組み化が一見進んだとしても、貧困の問題や教育の問題などを本質的に解決するには、とても長い年月が必要である。

 

テクノロジーやIT指向の貢献ではなく、こういう本質的な部分の改善に寄与したほうが日本らしいと思う。

 

最後に、私のお気に入りの本を紹介したい。

タイトルも秀逸だが中身も本当に充実している。

“テクノロジーは貧困を救わない”、本当に著者は新興国の事情を熟知されていると思う。

 

以上