近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

IT社会が浸透すればするほど、不道徳な見えざる手が増える?

不道徳な見えざる手(東洋経済新報社という本をご存じたろうか?

発刊は2017年5月。

 

私は、ITの仕事をしている関係で、この本は発刊後すぐに手に取った。

おおまかに、内容を紹介すると、経済とは釣り師とカモの永遠の闘いであるという事に尽きる。

言い得て妙だと思う。

 

釣り師とは、商売をする側のこと、つまり企業や商売人だ。カモとは顧客のことだ。これを自分自身が顧客の立場に置き換えてみると、この本のタイトルが妙に身につまされる。

 

 

この本は、私は、自社セミナーなどでも何度も引用した。

理由はシンプルだ。

特にIT業界にも身を置いていると、顧客をだます手口は年々エスカレートしていると痛感している。

 

この本の発刊から数年が経ち、今欧米ではGAFAに代表される巨大情報プラットフォームを運営する大企業に規制を迫っている。

個人情報保護の観点からも独占禁止法の観点からも様々な問題を孕んでいる。

 

先日も、LINEの中国への外部委託を問題視したセンセーショナルなニュースが流れた。

 

また、個人情報の漏洩の問題も後を絶たない。

社会で、デジタル化が進めば進むほど、大量の情報が瞬時に漏洩する。そして、ネット上のいたるところに流れる。

 

一回一回の漏洩の事件を、生活者として、真剣に受け止めていたら今の日本でも気が休まることはない。だから、大抵の人は、対岸の火事としてやり過ごしている。

 

私は個人情報保護の問題に関しては、専門分野でもあるので、何度も自社の書籍にも書いてきたが、ITがなかった時代から、情報は漏れるのが常だった。

 

20年前は、街角で名簿屋なる商売が当たり前に存在し、マーケティングで利用したい企業や特定の名簿が欲しい顧客はそれを有料で買っていた。当然、その情報の出所は怪しい。

 

ただ、この怪しいも今だから思うのであって、名簿屋が当たり前の時代は、少々のグレーゾーンではあっても、名簿屋は認知された商売だった。

 

もっと遡れば、名簿屋との付き合いがなくても、30年ぐらい前から私も生活実感としてあった。家族が増えれば、赤ちゃん用品店からDMが来る。お祖母ちゃんがなくなれば、お墓の案内が来る。考えてみたら、病院が発信源になっているとしか思えないことも多々あった。

こういう事例を書き出したら枚挙に暇がないし、皆さんも思い当たる節は沢山あるはずだ。

 

そういう意味では根っこは何も変わっていない。

冒頭で紹介した本が発刊されるずっとずっと前から、商売は不道徳な見えざる手が横行していたのである。

ただ最近はITが劇的に進化して様相が変わってきた。この見えざる手が、ますます、見えなくなり、巨大化し広範囲に及んできたのである。

 

先週、いよいよというか、ようやくというか、日本も個人情報などの規制にかじを切ったと連想できる記事が、日本経済新聞の一面を飾った。最近、日本はDX一色で一面にもIT系の記事が増えているが、この記事は私にとってもインパクトがあった。

 

“ダークパターン世界で規制強化”が大見出しだ。小見出しを拾うと、消費者サイトで客に不利な誘導、国内サイト6割該当と書いてある。

 

ちなみにダークパターンは記事から引用すると“ネット通販などのサイトで、消費者のスキをついて余分な注文などを促す仕掛け”と解説されている。

 

記事を読むと、私自身の生活者体験と専門的見地を重ねて読むので、内容自体に驚きはない。やっぱりなという程度である。

 

実際、今でも、定期購読を解約するときのわずらわしさであったり、リコメンド機能の過剰さであったりにうんざりする毎日であるから、生活者としては、何とかしてよ。という日々である。

 

一方、ビジネスをする私としては、経営者側の心構えと言うか、考え方がどうなっているのか?

と声高に言いたい。

 

ITは表向きはスマートで聞こえは良いが、不道徳を助長しやすいツールである。

ITというのは見えないものである。これは何度もこのブログでも書いたが、見えないからこそ、見えるように努力することが重要で、経営者自身が確固たる信念を持ち、事業の推進に当たらないと、ますます、見えざる不道徳な手は増えるし、知らず知らずに加担していたということも起こりえる。

 

日経新聞のトップにこの記事が出たことを対岸の火事とは思わずに、日本も当たり前に健全なITビジネスが要求される時代に来たと肝に銘じる必要があると思う。

 

以上