近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

役所の仕事と民間の仕事

同じ仕事でも、これだけ違うものかということがある。

それは、シンプルに言うと、民間と役所の仕事の違いだ。私は、役所の人間として働いたことがないので、そういう仕事に従事する方々との付き合いの中での判断ではある。

 

役所には、予算消化、つまり予算をどう使うということが前提で仕事が遂行される。これだけ書くと、民間でも当たり前ではないか?という人もいるだろう。

それは全くその通りで、中小企業ならいざ知らず、大企業やちゃんとした企業であれば、経営計画に立脚する年度予算と言うものがある。民間企業は会計年度単位をベースに、会社の収益計画を策定し、それの達成に向けて、日々、全社員がPDCAに則って、業務を遂行する。

それは、普通に考えれば、利益を出すことは絶対的な達成項目になる。その中で、コストに関わる部分も予算化される。売り上げを前年度対比で拡大させたり、利益額、利益率を増大させたりしようと思えば、やるべき実行施策は、幾つも考えられるが、その中の一つに、当初立てたコストに関する予算を、様々な創意工夫して、減額することを考えて実行するのが、民間企業となる。

 

当初の想定よりも使わなかったから、一見余ったように見えるお金で、無駄な遣いはしない。なぜなら、その余ったということは、利益が増大すると言う事だからである。

民間の会社を経営していると、これは痛いほど分かっている。だから、経営者は間違っても、予算を消化してねとか、予算を使い切ってねとは普通は言わない。

 

ところが、役所の人と会話していると、民間とは世界が違う事に気づく。

予算は余らせてはいけないのである。もちろん、役所の仕事は営利目的ではなく、税金を原資に生活者に対して、公的サービスを提供するところであるから、ここに、利益を出すと言う概念はない。つまり、民間企業で言う売り上げ収入はない。

 

歳入と呼ばれると思うが、税金などからの収入があり、それを使う。これは民間で言えば、使う事だけが仕事になる。民間と役所の仕事のどっちが難しいと言う話ではない。

そうではなくて、感覚的に、予算が余ってはいけない、余ったとしたら、別で使はないといけない。なぜなら、次年度予算が減るからである。

 

私の郷里の徳島の自治体には、高校生の友人が何人か務めているが、私が、会社経営を始めたころ、会話していても、役所は不思議な世界だと思ったことがある。

実は、日本の大企業にも似たような考えもあるようで、研究開発部門や人事部の予算などはそれにあたると思う。

それぞれの立場で、30年どっぷり仕事してきて、公務員から民間、民間から公務員。こういう職替えというのも世の中にはある。民間から公務員はあまりないと思うが、公務員から民間へという知り合いは意外と多い。

こういう別世界で仕事してみると、きっと、世界が変わるのだろうなと思う事が時々ある。

 

役所にもプロジェクトという概念が当たり前にあるとしても、利益を考えなくてよいプロジェクトマネジメントとはどういうものだろうか?

納期、品質までは同じだろうが、コストに関しての考え方が違う。民間であれば、当初の予算よりも如何にコストを抑えるかというところが、重要で、納期、品質、コストはトレードオフになりがちなところを、どう上手にコントロールできるかどうかが、プロジェクトマネージャーの手腕となる。

とすると、役所の人は民間でプロジェクトマネジメントは苦労するのではと思う。

両方に共通するのは、納期を守ることだと思う。品質については、役所は対価を支払う顧客の要求や期待値はないので、役所が定めた品質を如何に実現するかになりそうだが、民間は、顧客との相対の中で、提供するべき品質は、基準がぶれやすくなる。

まあ、どっちが良いかではなく、両方経験しても面白いだろうなと妄想する日が時々ある。

 

 

以上