近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

ウッドショックとウッドチェンジ

ウッドショックとウッドチェンジ。

一般の生活者で、この2つの言葉を知っている人がどれだけいるだろうか?

並べてみると似たような言葉だが、意味は全く違う。ただ、どちらも森林・林業に深くかかわる事である。

私は、建築関係に長年かかわっている。私も一級建築士としての仕事もしている。主に住宅設計の仕事を(株)エムアールエスブレインという会社で行ってきた。

コロナ禍の最中、日本の建築業界はウッドショックで影響を受けた。海外から輸入する木材の建材が不足したためだ。原因は中国や米国での住宅需要の高まりであったり、諸説報道もされていたりした。ウッドショックにより、相当な住宅の着工に遅れが出た。一時期、住宅産業の停滞が深刻だった。

さて、森林や林業に精通している人であれば、別だが、一般の人が、ウッドショックを耳にしたとしたら、どう思うだろうか?

日本には豊かに森林資源があるし、スギやヒノキが沢山あるのではないか?どうして、海外からの木材の輸入に頼らないといけないのか?国産材を使って日本の住宅の建築はできないのかと思うだろう。

話は変わるが、ウッドショックは、農業の課題と似ているように思える出来事である。今、日本の農業のカロリーベースでの自給率は40%を切っている。先進国の中では、異常な数字だ。いざという時の日本の食料をどう確保するかは、国の安全保障の問題でもあり、知る人ぞ知る深刻な問題だ。

今の日本人の人口を支えるだけの農産物を生産する土地はある。だけれども、工業化、高齢化などの様々な理由で、就農者が激減してきた。一方、貿易の関係で、海外から沢山の農産物を輸入するようになった。今になって、由々しき事態と言う事で、農業の再構築に相当力を入れている。

 

しかし、なかなか、就農者は増えないし、アグリビジネスをする企業も期待通りには増えていない。長年の間に衰退してきた農業を再生するのは容易な事ではない。これと、林業も似ている。

戦後の人口植林によって、今ちょうど、伐採適齢期にある杉などが豊富にあり、森林資源としては、余るほどの状態である。にもかかわらず、海外からの輸入に頼っている。木材の需給率は、2022年41.8%(林野庁)とある。

 

もちろん、農業と林業は別物であるが、国産に戻さないといけないという点で同じである。

で、共通しての問題の一つが、輸入の方が安いと言う事だ。国産はどうしても高くなる。

林業の場合だと、川上から川下までの木材のサプライチェーン林業の衰退とともに、不十分な状態だ。いくら日本の山に木があっても、それを使うためには、どうしてコストが合わない。それでも国産材を使うとなれば、日本の生活者が高い木材を使ったり、木を使ったりすることになる。

説明がおくれたが、ウッドチェンジの話に移る。

これは、林野庁が進めている、国産材を生活に取り入れましょう。使いましょうというキャンペーンだ。私も最近知って、多くの人に聞いてみたが、知っているのは10人に1人ぐらいだろうか。

 

2年後から、森林保全のために、国民全員が税金を納める。2024年から課税される森林環境税税(林野庁)と言う。ウッドチェンジは木づかいの勧めを行っている。私は大賛成だ。ただ、農産物と一緒で、高いか安いかの視点だけだと、どうしても国産には目が行きにくい。

もっと。大きな視野や心がけで、日本の森林資源を有効活用する必要がある。

 

専門書ではあるが、今の森林・林業の課題を分かり易くまとめた本を紹介しようと思う。

森林列島再生論(日経BP社)。

読み応えのある本であった。

 

 

 

 

 

 

以上