近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

アナログの立場から推進しないIT活用は迷走する

日本の迷走ぶりは、今に始まったことではないが、特にIT活用においては、迷路にハマっている感さえある。肝いりでデシタル庁を設立したのは良いが、推進の旗振り役と絶好の商売チャンスと捉えている業者の喧伝ぶりが目立つだけである。

 

国や行政だけではないが、“だれ一人取り残さない”というキャッチフレーズも今や流行語になって来た。これは、好意的に取ると、とてもフレンドリーな安心感が漂う話である。

 

これをIT活用に置き換えても、こんなメッセージになるだろうか?

“日本もいよいよ、ITを使う生活環境に変わります。仕事ももちろんです。皆さんがIT活用に習熟して不便なくストレスもかからず使いこなせるようになるまで、しっかり、伴走します”。

 

ところが、現実は違う。

マイナンバーカードにしても、様々な行政のデジタル化にしても、進め方がどうしてもビジネス感覚だ。ビジネス感覚という世界には、誰一人取り残さないという思想はない。

民間企業が、こういう考えでビジネスを構築するのは不可能に近い。

 

こういうことは、公助的な要素が強いので、国や行政がする話である。民間企業は、基本的に自分の会社が商売しやすい、優良顧客になるだろう相手を選ぶ。だから、そうでない人とは、積極的に接点を持たない。

取り残すと言う意味ではないが、顧客を選ぶのが民間企業である。だから、社会生活や行政手続きなどのIT化を民間が推進すればするほど、色んな人が取り残されるのである。

 

もちろん、国や行政が主導して、しっかりと、ITサービス会社をコントロールすればよいのだが、ITの世界に精通していないと、なかなかできるものではない。今のところ、結局、有力なIT会社からの出張組が、行政側に立っていたりする。なかなか進まないのは当然だろう。

 

私の考えでは、日本はアナログ力で経済面も生活環境も世界トップクラスに躍り出た国だ。それはそれで、今でも輝きを失いう事はない。そこに、世界中、ITが浸透し始めた。ITの日進月歩のスピードからすると、予想されたことではあるが、ちょっと先進的な新興国が一気にIT活用に走った。

投資が不要な世界ではないが、従来の社会インフラに比べたら、格段に投資コストは少ない。だから、中国しかり、ベトナムしかり、一気にデジタル化とやらが進んでいるように見える。実際に、ITは使われている。ベトナムでも、日本よりもスマホの普及は早かった。

 

バイクタクシーを予約する仕組みも、すでにベトナム市民の間にすっかり浸透した。こんな現象をとらえて、リープフロッグと喧伝し、そして、日本国内の人は焦る。私も、20年近く、新興国のITの進展を見てきたが、アナログ部分に目を転じれば、まだまだ、日本の数十年前の様相だ。誰にでも分かるが、これがITだけで変わる訳もなく、IT活用は浸透していく中で、これからは、アナログの世界の進化が必要になってくるのは明白だ。

 

今、日本の中小企業、高齢社会のど真ん中の人達、第一次産業、サービス業・・・アナログ、つまり、人間そのものの仕事で支えられている産業は幾らでもある。こういうところに、IT活用の推進の軸足を置くべきなのである。

 

そんなに急いで日本のIT活用をどうしたいのか?をもっと、しっかり見つめなおすことが今すぐ必要なのである。

アナログの世界で生きてきた人には、今のままで、過ごしてもらってよいようなIT化こそが、これからの世界が求めていることである。

 

 

以上