近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

適切なIT投資がますます難しくなる理由

無駄遣いや無駄な買い物をしない人は、世の中にはいないと思う。

もちろん、よっぽどの倹約家や合理的に社会生活が送れるような稀な人は別だが、私は、人間というのはそんな完璧な買い物や先行投資はできないと思っている。

 

普通に生活していても、買った時は、それがどうしても必要であったり、欲しくて欲しくてたまらなかったりしても、いざ買ってしばらくすると、そういう気持ちが覚めたり、思ったより必要でなかったり、そもそも、自分の期待した商品とは違う。こんなことはざらにある。

 

こんな私たちが、IT投資を無駄なく合理的にタイムリーにできるだろうかという話をしてみたい。これはビジネスの話であり、特に、経営者にとってのIT投資のこの課題はとても切実である。

 

もちろん、経営者にとって、IT投資以外でも、新商品や新ビジネスの開発に関する投資、研究開発への投資、人材に対して採用や教育投資など、様々な先行投資がある。こういうテーマでも失敗は尽きないものだが、IT投資となるとより一層、適正な投資が困難になる。

 

とは言え、世の中には、IT投資に成功して、見事に素晴らしい業績を上げている会社もある。ざっくりと私の感覚で言えば、中小も大企業も含めて、せいぜい1、2割程度だと思う。

最近では、DXブームが日本中に充満し、デジタル庁も新設されて、ますます、IT社会が進展しそうだ。見方を変えれば、IT投資で変革をというのがもっともらしいが、一方では、激変するIT環境への適応が企業にとっての死活問題にもなっている。

 

本来の目的は、ITをすぐれたツールとして経営に活用するのが本筋ではあるが、どうも最近のIT投資の世界は、世の中がデジタル社会に変わるから、どんどん、社会にITが浸透するから、企業もIT活用しないといけない。こんなムードだ。目的がどこかに行ってしまって、本末転倒感も漂う。

 

私も、たまたま、IT業界に関わるようになって、40年近くになる。この間、長いと言えば長いのだが、本当に驚くぐらいITは進化、変化した。長くて10年、場合によっては2、3年で新しITプラットフォームやクラウドサービスが登場するし、これだけ目まぐるしく新商品やサービス、技術が登場すると、いったい何を信じて、どれに投資したらよいのか分からなくなる。

 

IT以外の投資に関して言えば、専門家でなくても、投資に関しての判断基準はそれほどブレない。ITに関しては、判断基準を持とうにも、変化が激しすぎるし、クラウドサービスにしても、雨後のタケノコのように登場する時代の見極めはとても難しい。

 

一般生活であれば、衝動買いや見栄で買ってしまう事もあるが、企業経営ではそれは本来ご法度だ。しかしながら、IT投資に成功した企業が称賛され、世の中DXブーム。経営者としても、乗り遅れてはいけない。DXぐらい知っておかないと。社員にもITを使わさないと。こんな焦燥感だけが増大する。

 

さらに厄介なことに、こういうIT環境を取り巻く事情は、経営者にとって、心配がなくなる時代が来るのかと言うと、少なくとも私が40年IT業界に関わってきた限りでは、この先10年、20年は変わりそうにない。

 

もちろん、今より良くなってほしいという願望は誰よりも強くあるが、私ですら、ITのアドバイスをしようとしても、なかなかな、大変だ。その原因のひとつには、専門ではない人がITを語る人が増えすぎているのも大きい。

20、30年前は、ITは専門家が理解して実装する、一般の人は使うだけが基本だった。今は、ITを使ってきた若者はじめ、デジタル世代が、ITを普通に実体験から語る時代。

 

昔からの経営者が大変になる訳だ。

だからこそ、IT活用は、専門家に頼まないと、本当に無駄な投資がますます大きくなりそうである。

 

 

以上