近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

健康寿命と貢献寿命

  今、「健康寿命」を意識して暮らしている人はどれくらいいるのだろうか。

私の記憶では、この言葉が認知され出したのは、数年前だと認識している。2015年12月に上梓した『もし波平が77歳だったら?』をまとめるにあたって、健康寿命についての統計やデータ、考え方、この言葉の持つ意味などを深く考えた時のことだ。

当時、私は54歳。男性の健康寿命は71歳だった。この時の感覚は、まだまだ時間があるという反面、健康でない時期がとても長いことを再認識し、自分ならどうするだろうかと考えた。やはり健康でいたいと思ったし、ピンピンコロリを目指そうとも思った。

そして、「健康寿命を知っていますか?」「もし、健康でなくなったらどうしますか?」など、健康寿命について、様々な場面で話題にしてみた。

 

私と同世代より上の人との会話は真剣で、時として深刻な雰囲気になることもあった。初めて健康寿命という概念を知った人もいたし、すでに認知していて、そのために50代の今からしっかり準備して生活している人もいた。

 

あれから数年経った。コロナ禍も経験した。この間に、人生100年時代が話題になるようになった。健康寿命という考えが一般化されたとも言えるが、一方で私は、少し違和感を持っていた。

 

私は創業以来、あしかけ30年近く、日本の高齢化社会の課題解決に関心を持っている。ここ数年は、相当な時間をこのテーマに割いてきたし、シニアの方々と交流しながらセミナー、交流会、調査研究、情報発信、仕組み作りなどを行ってきた。

そんな中、しっくりこない部分が常に横たわっていた。

それは、健康寿命だけでくくった場合、そうでない人たちをどう表現するのかということだ。さすがに不健康寿命では問題だし、健康だけが人生ではない。

 

ところが、先日、久しぶりにニッセイ基礎研究所の前田展弘さんに面会して、霧が晴れた。ちなみに、『もし波平が77歳だったら?』をまとめる際に、高齢化社会の知見を求めるために、若手社員がネットで識者を探していた際に見つけたのが前田さんだ。私は早速コンタクトして、前田さんの活動を書籍に記した。以来、高齢化社会の課題解決のパートナーとして、活動を共にすることが多々あった。

 

「貢献寿命」

前田さんが東大の先生方などと共同研究している中で生まれたのがこの言葉だ。

前田さんから聞いた言葉「貢献寿命」は、とても新鮮で納得感があった。 貢献寿命とは、「社会とつながり役割を持ち、誰かの役に立つ、感謝されるといった関わりを持ち続けられる人生期間」というものらしい。これから東大の先生方との共同研究を通じて概念化をはかり、世の中に広めていくとのことだった。

 

 たしかに必ずしも健康でなくても、世の中や身近な人に貢献できることも多い。

最近は特に、社会貢献や次世代のために活躍するシニアも増えてきた。もともと、シニアになるとそういう意識が高まるものだ。

 

私は、健康を望みつつも思うようにいかなくなっていくのがシニアの特徴だと思っているし、たとえ寝たきりになっても、最先端のテクノロジーやITなどを上手に使えば、改善できることはたくさんあると思っている。ちょうどジェロンテクノロジー研究会を立ち上げようとしていた時期だったこともあって、前田さんとの面会がとてもタイムリーだったのである。

 

この先、自分がどういう状態で年齢を重ねていくかはわからない。健康を望みつつも、身体の不自由さが少しずつわかるようにもなってきた。

貢献寿命について、もっと向き合っていこうと思っている。

 

 

以上