近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

中小企業はアナログが当たり前

この20年ぐらい、中小企業は受難の時代だ。

もともと、中小はかつての高度経済成長時代の原動力と言われながらも、その立場は様々な面で弱かった。

特に、元請け下請けという構図や系列の中で、身動き取れず自立する機会を削がれてきた。

そしてバブル崩壊、以降30年以上に渡って、盤石と言われた日本経済に陰りが出た。そして失われた30年と言われるほど、中小に限らず大企業も経営環境の変化に翻弄されている。

 

大企業もそれまで中小企業の面倒を見てきた立場でありながら、自分のピンチとなると、あっさりと中小企業を切り捨てる。

トヨタのようなエクセレントカンパニィーだけは例外ではあるが、この先どうなるか分からない。だから、中小の自立が必然的に求められる。

護送船団方式と揶揄されるようにつねに依存してきた経営体質から自立への転換は頭で考えるほどには容易ではない。

ベンチャーや新興企業のように、ハイリスクハイリターン型を目指すにも、そういう体質と経営基盤もない。だから自ずと、現状維持となる。

 

こんな時代背景の中で、更なる難題が次々に発生する。

コロナ禍も、猫も杓子もの変革ブームに拍車をかけた。そもそも、変革の本質的な意味も分からずに、イノベーションの創出やDXという聞こえの良い新語が飛び交う。

 

こんな世界では、アナログは、時代遅れ感のレッテルにもなりつつある。アナログだから問題だ、論調によっては、アナログではこの先の変化に適応できない。デジタルに適応して当たり前。こんな印象すらある。

 

一体、日本は中小企業をどうしたいのか?

どうなってほしいのか?

官はどう考えているのか?

大企業は何を中小に期待するのか?

中小企業自身はどう対処するのか?

そもそも、私たち生活者は中小企業の存在と今の課題を知っているのか?

 

こんなことを声高に訴えたくなる。

それだけ中小企業の行く先は暗中模索、先行き不透明だ。この先、中小企業がゼロにはならないにしても、今、400万社あると言われているが、仮に半分になったらどうなるのか?

単純に考えても、雇用の受け皿の機能としては壊滅だ。また、大企業は中小あっての大企業とも言える。大企業が新たに中小企業を創るとでもいうのだろうか。

 

現にベトナムなどの新興国では、経済界の発展のため、すそ野産業の育成に躍起だ。シンプルに考えて、中小が変革することはあっても、消滅してはならないのである。

 

そこに加えて、戦後活躍してきた創業者の世代交代に突入している。後継者が見つからない中小企業は数十万社はあると言われている。

当然、M&A会社は大儲けだ。志と戦略なきM&Aの繰り返しは、結果的には中小企業を衰退させるだけだろう。

さらに中小企業に困難が増えた。

昨年ぐらいから、コロナ禍を契機に、デジタル化のオンパレードになった。

まるで、アナログは悪かの様な論調や記事も目立つ。そもそも、こういう人は、デジタルのことも、社会の実態も分かっていない。

 

そして、大企業はデジタル、中小はアナログ、ものづくりはアナログという固定観念が国民に浸透している。

高齢化社会も似たような構図だ。高齢者はアナログ、若者はデジタル。

 

私は、デジタル社会が進展すればするほど、アナログ回帰が進むと確信している。

だからこそ、中小企業はアナログで良いのである。現場やモノづくりは、基本的にはアナログだ。

 

特に中小零細企業の世界は、沢山の人が汗水流して働いている。社会のエッシェンシャルワークの根幹は、中小零細が担っている。

こういう本質的な基盤を無視して、デジタル化の成功はおぼつかない。

最後に、FAXに関する最近の日経新聞の記事について書く。今や、FAXすらアナログの象徴扱いだ。世の中にFAXが登場した時代は、デジタル機器と呼ばれたはずだ。それまでは手紙だったのだから。

 

こんなことは、これからも繰り返されるだけである。スマホがアナログと呼ばれる時代も近いだろう。人間が中心の社会である限り、常に基本はアナログなのである。

 

 

以上