近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

企業が変革して社会満足度の向上する時代へ

ベトナムで10年前の話になる。

私が運営するブレインワークスで、ジャパンスタイルショップを立ち上げたときのことだ。

 

このショップは、ベトナムホーチミンの最大都市の郊外に位置するニュータウンに新築されたシンガポール系のクレセントモールの地階の約650㎡を賃貸して創めた。

自分で言うのもなんだが、当時としては画期的で先進的だった。まだベトナムの一般の生活者は日本のことを全くと言ってよいほど知らない時代。

一方で一部の富裕層は、日本に関心が強まりつつあった。

 

そんなタイミングで、日本の企業とベトナムの企業の橋渡しをしていた私達としては、ベトナム人の日本のファンを一人でも増やすことを最大の目的に満を持してオープンした。今回はその時のオープンまでの店舗の内装にまつわる顛末の話である。

 

当時、ベトナムに進出して既に10年は越えていたし、他の新興国経験もあった。

だから、まだまだ発展途上の国であるという認識はあった。建築業界もしかりで、日本の様なプロジェクト進行も品質確保も全く期待していなかった。トラブルは連発するだろうと思っていた。

 

案の定と言うか、想定以上に考えられないような問題が次々発生した。店舗のオープンには沢山の業者との付き合いが必要である。そして、完成後には日本から輸入した商品を陳列しないといけない。

予想を超えて、ベトナムで日本的な店を立ち上げる苦労を思い知ることになった。

詳細は、割愛するが、簡単に言うと、とても納期には間に合いようがなかった。これに尽きる。

納期はあってないような世界なのである。

 

そんな中で予定通りに店はオープンしたと言いたいところだが、ハリボテだった。総領事や日本から招待した経営者などが参列するオープニングセレモニーの日程は変更することはできなかった。

だから、なんとか形だけを造った格好だ。

 

セレモニーが終わり、二人の友人にもらったコメントが印象的で、今でも忘れない。

 

一人は韓国人のビジネスパートナー。

TIVだねと。

This is Vietnum の意味だ。

もう一人はベトナム人の女性経営者。

近藤さん、こんなに長くベトナムにいるのに分かっていないの?ここは売り様の国ですよと。

 

私にとっては当時は今更ながらではあったが、特に売り様の国という彼女の言葉は、今でも脳裏に焼き付いている。

お客さんではなくて、売る人が偉い状態。一体どんな国だろうと衝撃だった。

 

日本には、近江商人の三方良しの考えがある。売り手、買い手、世間良しである。

今の日本でもこの考えで商売している経営者は多いし、今後ももっと重要視されると私は思う。

 

ただ、日本の現実も直視するべきである。

高度経済成長期の日本も、このベトナムの売り様に近い状態だったことは、少し、過去を学べは分かる。

実際に、私は20年ほど前に、日本の企業の顧客満足度の向上のお手伝いをしていた。中小企業も対象だったが、その頃は、大企業のお客様も手掛けた。なぜ、そういう仕事があったかと言うと、それは、程度問題はあるにしても、日本もかつて売り様の国だったからである。

 

人口減少が最大の原因だが、顧客が減って競争激化の中、顧客の囲い込みのための顧客満足度向上という図式だった。

今、世の中はさらに変わりつつある。

ベトナムなどの新興国でもサービス力の向上やアフターフォローの充実など、顧客満足度向上に向かっている。

 

では今の日本はどうなのか?

私は正直、この顧客満足度向上というきれいな行いの裏で何が行われているかの現実を見た時に、日本の経営は大丈夫かと心配になる。必要以上に購買をリコメンドするし、余計なものを買わせるマーケティングの濫用が目につく。

近江商人流に言えば、世間良しが欠けていると思うのだ。言い方を変えれば、社会満足度の向上である。

一部の生活者は、エシカル生活に目覚めつつある。一方で日本は世界一クレーマーの多い国でもある。こういう矛盾を抱えた日本。企業が向かう先は健全なビジネスであるべきだ。

一刻も早く、企業の変革が求められる。

 

以上