近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

デジタル難民は救えるのか?

ITに関わって、そろそろ40年になる。

ゼネコンでの現場監督を志向していたが、新入社員の時に配属先が想定外の電算室になった。

 

アナログ生活・アナログ思考の私には青天のへきれきだった。最初は、コンピューターの仕事に全く馴染めなかった。仕方なくITの仕事をしていた時期もある。

 

それ以来ずっとITから離れることなく、ITに常に向き合って仕事をしてきたことになる。

今の会社を1993年に創業してからも、ITは常に本業の一つであり、かつ、ITを先進的に活用するビジネスにも数えきれないほどチャレンジしてきた。

もちろん、失敗だらけである。仕事柄、企業や世間のIT活用の失敗も山のように見てきた。そして、今、世間にはDXブームが到来した。正直、私には何がDXなのかがよく分からない。今までさんざん使ってきたITという言葉と、このDXという言葉、一体何が違うのだろうか。

 

コロナ禍で、オンライン活用を筆頭にITの存在を意識した生活者も増大した。これは世界中がそうである。もちろん、私自身も生活者としてもITの恩恵の中で生きている。

専門家の立場で見た場合と生活者としての立場で見た場合の両側でIT活用の光と陰やそのギャップが増大していることに危機感を覚えている。

 

もともと、私はITはツールであると考えてきた。2001年に上梓した“だから中小企業のIT化は失敗する”で書いた基本的な考え方は今も変わらない。

しかし、この20年だけ見ても劇的に変化したことが幾つかある。一つは、インターネットが世界中で使われるようになったことである。

そして、スマホの登場が新しいIT社会の扉を一気に開いた。

20代はITエンジニアとして、創業した30代は企業のIT支援をする立場として、そして40代は新興国のIT活用に関わって来た。 

 

この40年のITの変遷の振り返りは割愛するが、この先、ITが世界中の生活ビジネスのインフラとして当たり前になりつつ中、10年後、20年後にどうなるかは誰にも予想できないと思う。

 

経営者には厄介な時代になった。

DXを世間が喧伝する中で、余裕綽々でこういう環境の変化に適応できる経営者もいるだろう。そういう人たちは、すでにIT活用の世界では、成功者として称賛されている。しかし、現実は、IT活用で四苦八苦、過剰投資や無駄な投資をしている経営者が大半だ。

 

これだけの日進月歩の中で、常に最適解を見つけて、タイムリーに自社の企業経営に活かすのは、困難である。言うは易し行うは難しの典型である。しかも、ITに関する商品やサービスは雨後の筍とのように増殖している。

氾濫していると言っても過言ではない。

 

40年ほど前、それまでコンピューターと言えば、大企業向けの汎用コンピューター、中小企業向けにはオフィスコンピュータ(通称オフコン)が定番だった時代に、NECのPC9801(いわゆるパソコン)が登場した時の様な感動はもうとっくの前にない。

 

私達の食生活で考えれば分かり易い。今は飽食の時代である。食べたいものは何でも食べられる状態であるし、しかも、その料理の種類は増える一方、どれを選んでよいか分からない状態である。

あり過ぎて贅沢過ぎて困る状態と言える。

にもかかわらずまだまだ新しい食材は生まれるし、斬新な料理が登場している。

 

ITもこんな感じになって来た。

ところで、ITバブルという言葉を覚えている人がどれぐらいいるだろうか。今から約15年前。それ以前にバブル崩壊で多くの人の記憶に残っている不動産バブルになぞらえて、ITバブルの時代があった。ITはツールとして使えば、バブルは起こらないが、ITを巧みに誇張して見せてバブルを起こす人達が沢山いたのである。  

 

当然、バブルはほとんどが蜃気楼なので崩壊する。今のDX。日本が繰り返してきたバブルにならなければ良いと私は心底思っている。

NHKでもすでに放映されているがデジタル難民なる言葉も生み出してしまった。

 

今を良くない状態と思っているだけでは、半世紀近くITに関わって仕事してきた私の気が済まない。

DXバブルにならないために役立つように仕事をしたいし、仮にDXバブルにすでになっているとしても、それによるダメージを少しでも軽減できたらと思う。

 

特に、私が創業以来仕事としてフォーカスしてきた中小企業の健全な発展や私自身も一員である一般市民としてのQOLを高めることに役立てることができればと思っている。

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以上