近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

自分ごと化は実に難しい

自分ごと化。

最近、結構新鮮に感じる言葉に出会った。

 

他人(ひと)ごとの反対の言葉だが、自責と他責にも近いと思う。

当社の主催するリスクマネジメントのセミナーに登場していただいた際に、株式会社HONKIエンジンの中西茂樹社長のお話にあった。

考えてみたら、良く知っている言葉ではあるが、私の使用頻度はとても低かった。

 

他人ごと化という言い方は世間では使うことはないが、他人ごとは日常会話ではよく登場するように思う。

 

自分ごと化を、リスクマネジメントの中で考えると、とてもしっくりくる。

実際、リスクというものを、ほとんどの人は楽観的に考える。

いわゆる万が一に備えることが出来るかと考えると、大抵の人はできない。自分には起こらないとか、自分の周りで起こったことがないと考える。

 

こういう感覚で、他人ごとになる。病気にしてもそうだ。特に若いときは自分が大病になるとは思わない。

 

一方、人間というのは、自分が一度危機的状況を体験すると、自分ごととしてとらえられるようになる。

こんな風に考えるだけでも、実に人間は単純にできていると思う。

 

例えば、夜道を歩いていて、背後で何か音がしたら、ビクッとする。あるいは、草むらを歩いていて蛇に遭遇すると体が自然に反応する。

これは、人類が誕生したばかりの野生生活の時代に生存のためのリスク回避の本能的な反応であると、何かの本で読んだことがある。

 

そう考えたときに、本能的にリスクを避ける能力を動物と同じレベルで持っている訳だが、逆に言うと、リスクに敏感過ぎると、人間としては日常生活が大変になる。

 

私は、心配性の人の方が、リスクマネジメントには向いていると思っているが、それはそれで精神的には疲れやすい。

 

人間には色々なタイプがあって、特徴のひとつとして社会性があるが、人間が集まった時に集団全体で一定のバランスが取れるようにできていると思う。

例えば、会社組織でいえば、2:6:2の法則の話は有名だ。

どんな人を100人集めても、その集団として優秀な20%、平均的な60%、どうしようもない20%に分かれる。これは有名な話であるが、上位20%の人は誰に言われなくても自分ごと化が自然とできる人と考えてもおかしくはない。

 

実際、自分の会社でもそう思うし、どの会社と接していてもそう思う。

もちろん、これは会社に限ったことではなく、スポーツチームでもボランティアの集まりでも同じことだろう。本能的な人間の習性だと思っている。

 

とはいえ、本能だから仕方がないでしょと諦める80%ではいたくない私としては、自分ごと化には、強い関心がある。少しでも多くの人に自分ごと化して欲しいと思うし、私も創業以来、社員教育や現場で似たようなことを教えてきたつもりだ。

教育や訓練、あるいは何かを学ぶときでもよく使われるが、ラクダを水飲み場に連れていくことが出来ても、飲ませることはできない。”という有名な言い回しがある。

 

私も、こういうことを社員にも伝え続けてきた。30年経った今の結論はどうかと言うと、やっぱり、自分から学ぼうと思わない限り、本物のスキル向上には結びつかない。

 

リスクマネジメントにしても、学びにしても、会社運営にしても自分ごと化は実に難しい。

会社運営の理想は、全社員がミニ社長として動くこと。コスト意識にしても、全社員が会社運営に関わるお金は全部自分ごと化して、コスト削減を意識的に実践すること。

こういうことは言うのは簡単だ。しかし実践は難しい長年の私のテーマでもある。

 

話は変わるが、地球の環境問題も自分ごと化が重要だ。

極端に言えば、大抵の人は自分の身近だけきれいになって終わりである。例えば、アフリカのガーナに日本人が使わなくなった家電製品が捨てられているが、よっぽと、当事者体験がないと自分ごとにはならない。

 

こんな風に幾つか考えてみても、実に自分ごと化は難しい。

特に、組織運営においては、経営者がかつて失敗してきたことと同じ体験をする機会を社員作りようがない。そもそも、経営者も好んで失敗してきたわけでもない。

 

おそらく、本能的に、生存するために他人ごと化するようにできているのが人間だと思う。

社会的活動をして、社会全体の調和や安定のためには自分ごと化が必要な訳で、このバランスをとることはとても難しいと思う。

自分ごと化も他人ごと化も結局は自分次第なんだと思う。

 

以上