近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

七つの習慣の”時間管理のマトリックス”の実現は実に難しい

仕事柄、サービスとして社員教育を様々おこなってきた。 

 

日本人は言うまでもなく、ベナトム人の社員教育には約15年前から一時期どっぷりとハマっていた。

 

ホテル、建設、製造業、ゴルフ場、日系レストラン、IT会社、美容室など多くの会社の社員研修を行ってきた。最近も、日系の小売店舗のスタッフ研修をオンラインで日本から行っている。

 

テーマは幹部研修やプロジェクトマネジメントなどの骨のある内容から、レストランやサービス業の顧客対応についてなど。

 

すでに、テキストとなる書籍もそれなりのラインナップだ。これからも、新しいテーマは増やしていく予定である。

 

 

こういう日本で培ってきた教育のコンテンツを新興国に展開するときに、とても気を付けないといけないことが幾つかある。

 

教育の基本だが、まずは相手の現状を知ること。つまり基礎知識やスキルの評価が欠かせない。

 

ゴルフで言えば、相手が初心者なのか?90代でプレイする人なのか?シングルプレーヤーなのか?などで大きく違う。

 

特に新興国社員教育では、重要なポイントだ。

あとは、生活環境やビジネス習慣の違いである。

こちらは、日本では当たり前のことが当たり前でないことが山のようにある。

 

もちろん、日本の常識は世界で非常識という部分も意識する必要はあるが、前提として、ビジネスのレベルやお客様対応力などのサービスでは日本より遅れているので、そのギャップをしっかり把握する必要がある。

 

例えば、お客様満足度の向上というテーマで、日本の今の感覚でベトナム人に教えようとすると空回りする。

 

今日は本題ではないので、簡単に書くと、少なくとも今の日本はお客様優先だ。書き出したら長くなるが、高度経済成長期は必ずしもそうではなかった。お客様は神様です。という有名な三波春夫のセリフは歌の世界の話だ。

 

ベトナムは、いまだに、売り様の国である。売る側が優位なのだ。これは日本の昔と似ている。

 

では、私の今日の本題に入るが、

私が、様々な教育サービスの現場や自社の社員教育で一番よく使う一つに“時間管理のマトリックス”がある。これは、あの有名な7つの習慣に書かれている考え方だ。

 

人間だれしも分かっていること、そして悩んでいることでもある人間の性を見事に集約した素晴らしい原理である。だから、私は30年近くこれを使っている。

 

もちろん、教育に使うだけでなく、実際に自分自身でも実践しようと毎日のように意識して行動している。けれど、難しい。

人間は、頭でわかっていても、行動できるかどうかは大違いなのである。

 

私は、分かることと実践することは、少なくとも難易度が10倍以上違うと考えている。

昨年出版した“経営はPDCAそのものである”にも詳しく書いた。

 

“時間管理のマトリックス”は実にシンプルだ。

生活でも仕事でも当てはまる。

 

自分自身の健康で説明する。

ものごとには、重要かどうかの判断と、緊急かどうかの判断がある。

気分が悪くなって、救急車で運ばれる。これは明らかに、重要で緊急である。

一方で、日頃から健康を意識して対策を講じていく。これが重要だが緊急ではないことだ。

 

前者は対症療法、後者は根治治療とも言える。

実は、仕事もほぼ全てこの区分けで分類できる。

ほとんどの人が、重要で緊急な仕事に明け暮れている。

 

日本が欧米先進国に比べて、労働生産性が低いとよく言われるが、私は必ずしもそうは思っていないが、どこの国の人でもこの重要で緊急な仕事の比重が高いと思う。

 

トヨタを考えてみれば分かりやすいが、明らかに重要で緊急でないことを全力で継続的な行う会社である。カイゼンが世界で使われているのはそういう意味である。

 

実は、ベトナムで10数年前に、初めて、この“時間管理のマトリックス”について、私の話を聞いていたベトナム人に質問して驚いた。

 

彼らは、平然と、“自分たちは、重要で緊急でないことばかりしている”に、ほとんどの人が手を挙げたのである。

日本で同じことを聞いてみればよかるが、ほとんどが、重要で緊急な仕事をしていると答える。

 

この違いが分かる人は、すでに新興国での経験が豊富な方である。

実は、納期が緩い、品質管理が厳格でない、クレームも気にしない・・こんなレベルでは、そもそも、緊急で重要な仕事など皆無なのである。

 

日本と新興国の違いはこういうところに如実に違いとなって顕在化する。

流石に、日本にベトナム人のようなパターンは存在しないが、頭でわかるのと実践は相当な違いがあることを肝に銘じる必要がある。

 

 

以上