近藤昇の「仕事は自分で創れ!」

「仕事は自分で創れ!」ブレインワークスグループCEOの近藤昇が、日本とアジアをはじめとするエマージンググローバルエリアに対する思いやビジネスについて発信します。

記録の時代のAI君との正しい付き合い方

今、AIのことを正確に知っている人が世の中にどれだけいるだろうか?

ここ数年、誰が仕掛けたか、一気にAIは一般用語化された。

だが、その反面、正しく理解している人は極めて少ない。

 

今更、書く必要もないが、AI議論は沸騰している。AIに関する記事も玉石混交。

記憶に新しいところでは、人間の仕事がなくなるという危機感を煽った時期もあった。

 

AIを日本語にすると、人工知能

この響きが怪しさを醸し出す。私が子供の頃、キカイダーという人間と機械の混ざったキャラタクーがあった。 

人工知能からはこういうイメージがつきまとう。

 

だから、AIと呼べばよいのだが、そうすると、IT業界特有のバズワードとなってしまう。

最近でこそ、5Gは分かりやすくなってきたが、XTEC、AR、VR、DX・・こんなこと理解するほうが不思議だ。

 

たまたま、私は35年間、IT業界の中にもいたから、基本的な事は判別できるが、IT業界は、相変わらずバズワードを誰かが生み出し喧伝し、そして商売につなげる。一般の生活者や中小企業の社長は、不安にもなるし振り回される。

 

だから私は、昨年からAI君と呼ぶことにした。

いかがだろうか?

親しみがわかないだろうか?

 

そもそも、AIが登場したとして、私たちの生活やビジネスの何が変わるのだろうか?

 

例えば、農業の進化を考えてみる。

縄文時代に始まったとされる日本の農業が劇的に進化を始めたのは、たった10年前ぐらいだ。

 

今は、テクノロジーによって、品質管理、生産管理などが中心に効率化され安定的な生産ができるようになった。

また、農業は基本的には重労働だから、ここに機械化やロボットの活用と言うのが必要となってくる。あとは、商品の販売とトレーサビリティだ。

 

大昔の物々交換とまでは言わないが、単純に生産者が商品を消費する生活者にダイレクトに販売することは安心だし効率が良いのは明白だ。

こういう仕組みは、誰でも分かる。

さらに単純に考えて、誰がキャベツや玉ねぎを生活者に届けるのかである。結局は、今後も永久に存在する物流が必要になるし、小売店が存在する以上、仲買の機能も必要となるのである。

 

6次産業が日本で叫ばれて久しいが、これもプロ農家は挑戦すればよいが、一般の農家の人は、作るだけに専念すればよいと思う。要するに選択の自由なのである。

 

この農業の事例で例えて、AI君がどこに登場すればよいかだ。もちろん、AI君が必要となる要素はあるが、一般の農家には必要がない。

 

結局、農業をビジネスとして大規模化するとか、農家を束ねて塊としてフードバリューチェーンを構築するとか、こういうビジネスであれば、生産管理、品質管理、販売管理などで、AI君が必要になるかもしれない。

 

次は、経営者のケースで考えてみる。

私は、“もし自分の会社の社長がAIだったら”を約4年前に上梓した。

この本で何が言いたかったかと言えば、AIは社長が使えば、結構役に立つ。この一言につきる。

 

特に中小企業の社長は、気が休まることがない。仮にMBAを持った理論派の社長でも、トラブルや突発的なクレームには、生身の人間として対応することが要求される。

 

どんな時代になっても、社長がラストパーソンであることに変わりはない。株式会社が日本で初めて出来て約200年だが、資本主義の世界では当たり前だ。社長は全責任者なのである。

 

社長だから、そういう境遇が当たり前という言い方ももっともだが、この当たり前の世界をAI君があれば、かなり改善できると確信している。

 

では、このAI君とはどんな役割なのかだ。

多くの人が、コンサルタントや顧問の進化版のように思うだろう。

 

私の考えは全く違う。 

 

社長はいつの時代もラストパーソンである。自己責任、結果責任の立場だ。

仮にAI君が言う通りにしました。失敗しましたでは話にならない。資本主義の仕組みが変わるのであれば別だが、社長は全責任者である。

 

では、AI君は何をすればよいのかであるが、それは社長自身をAI化することである。

 

幾ら熟練の社長でも、こんな厳しい経営環境で変化の激しい中、瞬時に正しい経営判断をすることは難しい。当然、長年にわたり闘ってきた、幾多の苦難を潜り抜けてきた、周りから見たら神業というわれる対応もあったことだと思う。

しかし、人間は流される、過去の経験も忘れる。

 

私の考えるAI君は、社長自身の長年の活動や考えを記録しそれをタイムリーに思い出させてくれる自分のノートのようなものである。

事業継承にも間違いなく使える。

私は、これが実現出来たら、ひとまず今の責任者からは、引退しようと思う。

 

以上